ただ、一さいは過ぎて行きます。
中二病を患ったことのない人はまずまずいないと思うんですよね。程度の差こそあれ、みんな何かしらやってると思うんだ。
友人は「怪我をしたときに大げさに包帯を巻いてこれは勲章だって思い込んで過ごしたり、とにかく包帯とか眼帯とか大怪我に憧れた」だそうです。そういうタイプかー! となりましたね。後輩は「ずっと哲学書を読んでました」だそうです。哲学書を読んでる俺カッコいい……だったらしく、全く理解が出来てなかったとか。
で、私はというと中二で初めて太宰治を読んだんですよ。分かりますね。そうです、人間失格に傾倒していきました。大庭葉蔵に非常に肩入れをしていたんですよ、彼は私の気持ちを分かってくれると。ちなみにこれで読書感想文書きました。今となってはいい黒歴史です。
さて、今日のプレゼンは人間失格です。
ちょうど初めて読んだ出版社のがありました。集英社はこの頃、こうやってジャンプ作家に表紙を描かせていたんですよね。人間失格はご存知大畑先生でした。坂口安吾の時にも書きましたが、同時期に青い文学シリーズをテレビ放送していたんですよね。そのアニメ版人間失格もなかなかのものなので機会があれば是非ご覧になってください。
で、人間失格。これは知らない人はいないんじゃないかというくらい有名な作品なのであらすじも必要ないでしょう。太宰の遺書、なんていわれるように、事実所々太宰の人生をなぞっています。しかし、太宰と葉蔵はまったく別人です。重ねて読む必要はないでしょう。
ちなみに、葉蔵の名は晩年に収録されている『道化の華』にも出てきますので、そちらもあわせてどうぞ。
さて、どうして今この作品を取り上げたかと言いますと、どうにもこの人間失格は誤解をされている作品だと思うからです。大体言われるんですよ、太宰が好きだ人間失格はいい作品だと言うとね「暗い話でしょ」「自殺願望でもあったのか」と。
違いますからね!
確かに、確かに明るい作品とは言いがたいです。子供の頃から人の顔色ばかりうかがって過ごすし、何度も心中未遂を重ねるし、奥さんは寝取られるし、薬物中毒になるし、あげく脳病院に強制入院ですから。うん、明るい要素なかった。でも、一方で人間のしぶとさや強さを感じることも出来る作品です。逆説的ではありますが。
よく、漫画でさらっと有名作品を読んでおこう見たいな本があるじゃないですか。一般教養として。今時本の内容なんか話し合わないし、就活の時にもしかしたら役に立つんじゃないの程度の本です。あんなので読むくらいなら潔く読んでないといえ! と個人的には思いますね。
で、その手ので取り上げられると大抵脳病院に入れられたシーンで終わっていると思うんです。私はそれは間違っていると思います。
人間、失格。
もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。
このシーンばかりが取り上げられているように思うんです。でも、これより前に葉蔵が奥さんの差し入れの薬を断るところがあるんですね。ずっと、人に言われたことは断れなかった葉蔵が、人の目におびえていた葉蔵が、断れば嫌われるのではと恐れていた葉蔵が断ったのです。紆余曲折は会ったものの、意思をはっきりと主張できるようになった葉蔵は確かにいたのです。私はこのシーンが大好きで、読み返すたびに胸が締め付けられる思いがします。
他にも父がなくなるシーンや、女中との滑稽なやり取りなど、見ていただきたいシーンはたくさんあります。
私は思うんです。この話は悲劇の皮を被った喜劇ではないでしょうか。
おかしいでしょう、人間なんて。滑稽でしょう、必死になって生きていくなんて。まるで三文芝居のようでしょう、こんな人生。
そう太宰に言われているような、そんな気がするんです。
そして、だからこそこの道化の仮面を被って生きた葉蔵の人生が私は大好きなんです。
暗い話なんて敬遠しないで、どうぞ手に取ってみてください。薄い本ですから、すぐに読めます。そして、人生という芝居を見てください。何かは必ず得られますから。